ディープラーニング(深層学習)向けパソコンとは?スペックと製品を紹介

「ディープラーニング用のパソコンは何がおすすめ?」
「スペックはどれくらい必要なの?」
「ノートパソコンとデスクトップパソコンはどちらを選ぶべき?」
近年は、AI人材の需要が拡大しており、ディープラーニング(深層学習)や機械学習に興味を持ち始める方が増えています。
そうした中で、以下のような疑問を持たれている方も多いのではないでしょうか。
「どのようなパソコンを準備すればいいのか?」「自分が持っているパソコンは十分なスペックを備えているのか?」
そこで本記事では、ディープラーニング(深層学習)向けのパソコン選びについて深掘りしていきます。後半では「パソコン購入費用を抑えるコツ」にも触れていますので、これから購入される方は、ぜひ参考にしてみてください。
ディープラーニング(深層学習)とは?
最適なパソコン選びをするには、まずディープラーニング(深層学習)に関する基礎理解を深めておく必要があります。
ディープラーニング(深層学習)とは、AI技術を支える機械学習の一種です。
ニューラルネットワークという「人間の脳神経回路を模倣した人工知能」を用いることで、複雑なパターンの学習を得意としています。
「深層学習」と名付けられている通り、多層のニューラルネットワークを重ねることで、人間のようにデータの深いところまで理解が可能です。
つまり、ディープラーニング(深層学習)を構築するためには、相応のデータ量を学習させる(多数の層を積み重ねる)必要があります。
したがって、個人の趣味レベルであればミドルスペックでも対応可能ですが、社内業務で使用するモデル開発の場合は、ハイエンドスペックのパソコンが必要になります。
また、ディープラーニング(深層学習)には「Python(パイソン)言語」を用いることが多いため、Pythonに対応したOSを選びましょう。
ディープラーニング(深層学習)向けパソコンの選び方
ディープラーニング(深層学習)向けのパソコン選びでは、以下の項目をチェックする必要があります。
- OS
- CPU
- GPU(グラフィック)
- RAM(メモリ)
- ストレージ
順番に見ていきましょう。
OS
OSとは「Operating System(オペレーティングシステム)」の略称で、パソコンを動かすための基本ソフトウェアを指します。
パソコン本体とソフトウェアをつなぎ、全体の管理・制御をするのが役割です。
OSの種類としては、主に以下が挙げられます。
- Windows(Microsoft)
- Linux(オープンソース)
- macOS(Apple)
ディープラーニング(深層学習)を含むAI開発では、さまざまなソフトウェアと互換性がある「Windows」が広く利用されています。
ただ、AI開発における上級者の中では、オープンソースでカスタマイズ性の高い「Linux」の人気も高いです。
どのOSを使うか迷う場合は「自身が使い慣れたOS」「開発するAIの種類」「使用するフレームワーク」などと照らし合わせながら相性を確認するとよいでしょう。
CPU
CPUとは「Central Processing Unit(セントラルプロセッシングユニット)」の略称で、コンピューターの頭脳にあたる部分を指します。
人間の頭脳と同じように、CPUの性能はパソコンの処理速度に大きく影響します。複雑な計算処理が多いディープラーニング(深層学習)では、高性能なCPUを選びましょう。
具体的には、Intelであれば「Core i5以上」、AMDであれば「Ryzen 5以上」が推奨されています。
GPU(グラフィック)
GPUは「Graphics Processing Unit(グラフィックスプロセッシングユニット)」の略称で、パソコン内の画像や映像の処理を担当する装置です。
ディープラーニング(深層学習)にGPUが必要とされる理由には、CPUよりも処理速度が大幅に優れている点が挙げられます。
複雑かつ膨大なデータを処理するディープラーニング(深層学習)では、CPUだけに処理を任せるのが難しくなっています。そのため、ディープラーニング(深層学習)を実装するAI開発にもGPUが使用されるようになったわけです。
GPUメーカーの代表例には、以下の2社が挙げられます。
- NVIDIA
- AMD
CPUと同じく、GPUの性能はパソコンの処理速度に大きく影響します。
小規模開発ならこだわる必要はありませんが、中規模〜大規模の開発をする場合は、高性能なGPUを選びましょう。
RAM(メモリ)
RAMは「Random Access Memory(ランダムアクセスメモリ)」の略称で、パソコン内のデータを一時保存する記憶装置です。
RAMの容量が大きいほど、同時処理できる作業を増やせます。一方、容量が少ないと、メモリ不足によって作業が中断される場合があります。
ディープラーニング(深層学習)は入力データが多い傾向にあるため、最低でも16GB以上、できれば32GBや64GB以上を選ぶのがおすすめです。
ただ、パソコンの種類によっては、後からメモリを増設できるモデルもあります。現時点で大容量モデルの購入が厳しい場合は、必要に応じて増設していくとよいでしょう。
ストレージ
ストレージは、パソコン内のデータを長期保存するための記憶装置です。主に以下の2種類に分けられます。
- SSD(ソリッドステートドライブ)
- HDD(ハードディスクドライブ)
SSDは価格が高めではありますが、その分だけHDDよりも読み書き速度が速いです。また耐久性にも優れることから、基本的にはSSDの選択をおすすめします。
容量は、256GBでも問題ありません。ただし、512GB以上を搭載していると大容量データも保存しやすくなります。
そのため、可能なら512GBを選ぶのが望ましいです。
とはいえ、ストレージ容量はHDDで柔軟に増設できます。初期費用を抑えたい場合は、必要に応じてHDDと組み合わせながら利用するとよいでしょう。
ディープラーニング(深層学習)向けパソコンの推奨スペック例
ここからは、ディープラーニング(深層学習)向けパソコンの推奨スペックを、以下の用途別に紹介します。
- 小規模な業務効率化や学習用途
- 画像解析や音声認識の開発用途
- 大規模プロジェクトや研究用途
あくまでも推奨例ではありますが、パソコン購入をする際の参考にしてみてください。
小規模な業務効率化や学習用途
項目 |
スペック例 |
OS |
・Windows 10/11 ・Linux ・macOS |
CPU |
・Intel Core i5 ・AMD Ryzen 5 |
GPU(グラフィック) |
特にこだわる必要なし |
RAM(メモリ) |
16GB以上 |
ストレージ |
256GB以上(SSD) |
小規模な業務効率化や学習用途であれば、GPU(グラフィックス)にこだわる必要はありません。
GPUなしのパソコンでも十分使用できるため、20万円前後の安価な価格帯で購入できる場合が多いでしょう。
画像解析や音声認識の開発用途
項目 |
スペック例 |
OS |
・Windows 10/11 ・Linux ・macOS |
CPU |
・Intel Core i7 ・AMD Ryzen 7 |
GPU(グラフィック) |
・NVIDIA GeForce GTX 1660以上 ・AMD Radeon RX 5600以上 |
RAM(メモリ) |
16GB以上 |
ストレージ |
512GB以上(SSD) |
画像解析や音声認識の開発用途の場合は、画像や録音データの処理に優れるGPU搭載モデルが好ましいです。
また、大容量データも気軽に保存できるように、512GB以上のストレージを選ぶとよいでしょう。
大規模プロジェクトや研究用途
項目 |
スペック例 |
OS |
・Windows 10/11 ・Linux |
CPU |
・Intel Core i9 ・AMD Ryzen 9 |
GPU(グラフィック) |
NVIDIA GeForce RTX |
RAM(メモリ) |
64GB以上 |
ストレージ |
1TB以上(SSD) |
大規模プロジェクトや研究用途の場合は、大量のデータを処理するためのハイエンドモデルが必要になります。
よって、数百万円程度の価格になることも珍しくありません。
とはいえ、GPU・RAM・ストレージは後から拡張していくこともできます。初期費用を抑えたい場合は、拡張性の高いパソコンを選び、必要に応じて増設していくとよいでしょう。
ディープラーニング(深層学習)向けパソコンおすすめ3選
ディープラーニング(深層学習)におすすめなパソコンを用途別に3つ厳選しました。
各パソコンの特徴を詳しく見ていきましょう。
- Dell XPS 13|小規模な業務効率化や学習用途
- ASUS ROG Strix G16|画像解析や音声認識の開発用途
- HP Z8 G5 Workstation|大規模プロジェクトや研究用途
1.Dell XPS 13|小規模な業務効率化や学習用途
メーカー |
Dell |
価格 |
260,000円(税込)〜
※公式サイトをもとに最小構成価格を記載(2025年2月時点) |
OS |
・Windows 11 Home ・Windows 11 Pro |
CPU |
・Intel Core Ultra ・Intel Core Ultra ・Intel Core Ultra ・Intel Core Ultra |
GPU(グラフィック) |
Intel Arc グラフィックス |
RAM(メモリ) |
・16GB ・32GB |
ストレージ |
・512GB ・1TB ・2TB |
画面サイズ |
13.4インチ |
公式サイト |
「Dell XPS 13」は、画面サイズ13.4インチ・最小重量1.18kgと携帯性に優れたノートパソコンです。
削り出しのアルミニウムボディや、ガラス製のタッチパッドが美しく、外に持ち出したくなるデザインといえます。最大26時間のバッテリーも外作業において心強いポイントです。
CPUには「Intel Core Ultraプロセッサー」が採用されており、AIを活用したコンテンツ作成や編集にも対応しています。
高負荷パフォーマンス時でも静かに利用できるように設計されているのも魅力的です。外出先でも周りを気にすることなく、ディープラーニング(深層学習)を扱えるでしょう。
2.ASUS ROG Strix G16|画像解析や音声認識の開発用途
メーカー |
ASUS |
価格 |
259,800円(税込)〜
※公式サイトをもとに最小構成価格を記載(2025年2月時点) |
OS |
Windows 11 Home |
CPU |
Intel Core i9-13980HX |
GPU(グラフィック) |
NVIDIA GeForce RTX 4060 |
RAM(メモリ) |
・16GB ・32GB |
ストレージ |
512GB |
画面サイズ |
16インチ |
公式サイト |
「ASUS ROG Strix G16」は、NVIDIA GeForce RTX 4060のGPUを搭載したゲーミングノートパソコンです。
CPUには「Intel Core i9-13980HX」が搭載されており、さまざまなゲームを軽快にプレイできます。よってAI開発における画像解析や音声認識もスムーズにおこなえます。
また、冷却ファンが2つ(CPU用とGPU用)備わっているのも特徴です。複数の冷却ファンを搭載することによって、高負荷な作業でもハードウェアの性能を最大限発揮できます。
ゲーミングパソコンならではの画面の鮮やかさも相まって、画像や映像を扱う方には特におすすめしたいパソコンのひとつです。
3.HP Z8 G5 Workstation|大規模プロジェクトや研究用途
メーカー |
日本HP |
価格 |
867,350円(税込)〜
※公式サイトをもとに最小構成価格を記載(2025年2月時点) |
OS |
Windows 11 Pro for Workstations |
CPU |
Intel Xeonプロセッサー |
GPU(グラフィック) |
NVIDIA RTX 6000 Ada |
RAM(メモリ) |
最大1TB |
ストレージ |
最大108TB |
画面サイズ |
– |
公式サイト |
「HP Z8 G5 Workstation」は、高いプロセッサー性能が必要なプロフェッショナル向けのワークステーションです。
デュアルソケット設計により、Intel Xeon CPU(最大64コア)とNVIDIA RTX 6000 AdaのGPUを2基ずつ搭載しています。
また、最大1TBのDDR5 ECCメモリを使用することで、高速かつパワフルなパフォーマンスを実現可能です。
拡張スロットも7つ装備されているため、どんな大規模なプロジェクトの要求にも応えられる性能になっています。
ディープラーニングなら「ノートパソコン」と「デスクトップパソコン」のどちらを選ぶべき?
ディープラーニング(深層学習)用のパソコンを選ぶ際に、「ノートパソコン」と「デスクトップパソコン」のどちらにするべきか迷う方も多いかもしれません。
結論からお伝えすると、ノートパソコンとデスクトップパソコンのどちらを選ぶべきかは、利用者の好みや状況によって異なるのが実情です。
どちらのパソコンでもディープラーニング(深層学習)の取り扱いは可能であり、それぞれにメリット・デメリットがあります。
ノートパソコンとデスクトップパソコンのメリット・デメリットは、以下の通りです。
種類 |
メリット |
デメリット |
ノートパソコン |
携帯性が高い 消費電力が低い |
拡張性に限界がある 冷却性能に限界がある |
デスクトップパソコン |
拡張性が高い 冷却性能に優れている |
設置場所が限定される 消費電力が高い |
ノートパソコンの最大のメリットは、携帯性に優れている点です。場所を選ばずに作業できるため出張が多い方や、移動しながらの作業を好む方におすすめといえます。
一方、デスクトップパソコンは、RAMやストレージを自由に追加交換できるのが魅力です。必要に応じてスペックを拡張できるため、開発規模に応じて柔軟に対応できます。
また、デスクトップパソコンは冷却性能に優れています。本体の発熱はパフォーマンスに大きく影響を与えるため、高負荷な処理が多い場合はデスクトップパソコンがおすすめです。
とはいえ、近年はAWSやAzureなどのクラウドサービスも充実しています。費用はかさんでしまいますが、クラウドを活用することで、ノートパソコンでもリソース不足を補えます。
ディープラーニング(深層学習)はノートパソコン・デスクトップパソコンのどちらでもできますので、両者のメリット・デメリットを比較しながら選ぶのがおすすめです。
ディープラーニング(深層学習)向けパソコンの購入費用を抑えるコツ5選
ここからは、パソコン購入費用を抑えるコツを5つ紹介します。少しでも初期費用を抑えたい方は、ぜひ参考にして見てください。
- 必要なスペックを明確にする
- 拡張性の高いパソコンを選ぶ
- セールによる大幅値引きを狙う
- 中古品や整備済製品を検討する
- 企業や事業者なら補助金を申請する
1.必要なスペックを明確にする
パソコン購入費用を抑えるには、現時点で必要なスペックを明確にすることが重要です。
CPU・GPU・RAM・ストレージは、高性能・大容量になるほど価格が上乗せされます。用途に対してオーバースペックなパソコンを選んでしまうと、それだけ無駄な費用を支払うことになるわけです。
例えば、個人の趣味レベルでディープラーニング(深層学習)を学ぶだけであれば、高性能なGPUは必要ありません。CPUやストレージも最低限で十分といえます。
無駄なパーツに費用をかけないためにも、まずは自分が必要とするスペックを明確にしましょう。
2.拡張性の高いパソコンを選ぶ
「将来に備えて高いスペックを選んでおきたい」と考えている場合は、拡張性の高いパソコンを選ぶのもひとつの手段です。
拡張性の高いパソコンを選ぶことで、RAMやストレージを必要に応じてアップグレード可能になります。
「現時点で必要なスペックのみに代金を支払う」「将来のアップグレードに備える」の両方を実現できるため、初期費用を抑えたい方におすすめです。
3.セールによる大幅値引きを狙う
セール価格を狙うのも、費用を抑えるうえでは欠かせないポイントです。
パソコンは、公式サイトや認定販売店で大幅値引きをしているケースがよくあります。
例えば、以下の時期を狙うとよいでしょう。
- 新学期前(2〜3月)
- ボーナス時期(7月・12月あたり)
- 初売り時期(1月上旬)
ただし、人気モデルは即完売するケースが多いです。狙う場合は、セール時期を事前にリサーチしておきましょう。
4.中古品や整備済製品を検討する
新品にこだわらないなら、中古品や整備済製品を狙うのもおすすめです。
整備済製品とは、初期不良や短期間使用で返品された商品を修理・調整した状態で販売しているものです。
例えば、へこみや傷で返品された製品は、メーカーや専門業者が修理またはパーツ交換をしてから再販売します。バッテリー交換や安全性テストもされるため、新品同様に利用できるのが特徴です。
中古品に関しても、信頼できる専門ショップを見極めることで、高品質なパソコンを安く購入できます。大手ショップを中心にチェックしてみると、思わぬ掘り出し物が見つかるかもしれません。
5.企業や事業者なら補助金を申請する
近年は、中小企業や小規模事業者の「労働生産性向上・DX推進」をサポートするために、国や自治体が補助金制度を整備しています。
企業や事業者の場合は、補助金を申請することでパソコン購入費用を抑えられる可能性が高いです。
「IT導入補助金」では、パソコンの購入も補助金対象になっていますので、補助金制度を有効活用してみてください。
まとめ:ディープラーニング(深層学習)のパソコンは用途や規模に合ったスペックを選ぼう
ディープラーニング(深層学習)は複雑かつ大量のデータ処理が多いことから、パソコンもハイスペックなものが必要になります。
とはいえ、小規模開発や学習用途であれば、ミドルクラスのパソコンでも十分に対応可能です。将来的なアップグレードに備える際は、後からRAMやストレージを拡張できるモデルを選ぶと初期費用を抑えられます。
最適なパソコンは目的や開発規模によって異なりますので、まずは自分が必要とする最低限のスペックを見極めましょう。