E資格に必要な勉強時間の目安は?短期間で合格するためのコツも解説


「E資格の勉強時間はどのくらい?」
「どんな内容を学べばいいの?」
「効率的に知識を身につける方法はある?」
AI技術は日々進化を続けており、それにともなって機械学習やディープラーニングを適切に実装できる人材の需要も急速に高まっています。
E資格は、そのAIエンジニアとして高いスキルを持っていることを証明する資格です。取得することで、市場価値を高めていけるでしょう。
とはいえ、E資格は難易度が高いと言われており、どれくらい勉強すべきなのか気になる方も多いかもしれません。
結論からお伝えすると、E資格の勉強に要する時間は「100〜300時間」程度です。仮に1日2時間の学習を確保した場合、2〜5か月ほどかかる計算になります。
そこで本記事では、E資格の勉強時間に関する詳細を解説します。短期間で合格するために効果的な学習方法も紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
E資格とは
「そもそもE資格とは何か」と疑問がある方もいるかもしれませんので、まずは概要から紹介します。
E資格とは、一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA)が主催するエンジニア向けの資格です。
資格を取得することで、ディープラーニングの基礎理解と実装能力を有していることを証明できます。
詳細は以下の通りです。
運営 |
一般社団法人 |
料金(税込) |
・一般:33,000円 ・学生:22,000円 ・会員:27,500円 |
試験時間 |
120分 |
受験資格 |
JDLA認定プログラムを試験日の過去2年以内に修了していること |
公式サイト |
なお、受験するためには「JDLA認定プログラム」を修了する必要があります。誰でも受験できるわけではないため注意が必要です。
E資格に必要な勉強時間は100〜300時間
E資格の取得に必要な勉強時間は「100〜300時間」が目安となっています。
この数値は、Study-AIが2021年に実施した受験者アンケートに基づいたものです。E資格受験者68名(合格者58名/不合格者10名)の回答は、以下となりました。
- 100〜200時間(45.59%)
- 200〜300時間(42.65%)
- 300〜500時間(8.82%)
- 700〜1,000時間(2.94%)
仮に、1日2時間の学習時間を確保した場合、2〜5か月程度はかかる計算となります。
もちろん、個人の知識背景や学習方法によって差は生まれますが、いずれにせよ数か月単位でスケジュールを組む必要はありそうです。
E資格の取得で勉強時間を割くべき内容
E資格の問題は、シラバスより出題されます。
大まかな内容は、以下の通りです。
項目 |
内容 |
数学的基礎 |
・線形代数(行列、テンソルの積、勾配など) ・確率・統計(ベルヌーイ分布、ガウス分布など) ・情報理論(エントロピー、KLダイバージェンスなど) |
機械学習の基礎 |
・パターン認識(近傍法、距離計算など) ・線形回帰(Lasso回帰、Ridge回帰など) ・ロジスティック回帰(ロジット、シグモイド関数など) ・サポートベクターマシン(マージン最大化、カーネル法など) ・決定木(Random Forest、勾配ブースティングなど) ・次元圧縮(主成分分析、寄与率など) ・クラスタリング(k-means、群平均法など) ・機械学習の課題(過剰適合、過少適合など) ・検証集合(訓練データ、交差検証など) ・性能指標(正解率、適合率、再現率など) |
深層学習の基礎 |
・順伝播ネットワーク(回帰、2値分類など) ・深層モデルのための最適化(確率的勾配降下法、誤差逆伝播法など) ・深層モデルのための正則化(L1正則化、パッチサイズなど) ・畳み込みニューラルネットワーク(カーネル、パディングなど) ・リカレントニューラルネットワーク(順伝播の計算、双方向RNNなど) ・Transformer(Self-attention、Scaled Dot-Productなど) ・汎化性能向上のためのテクニック(ノイズ付与、バギングなど) |
深層学習の応用 |
・画像認識(残差接続、ボトルネック構造など) ・物体検出(Bounding Box、アンカフリーなど) ・セマンティックセグメンテーション(スキップコネクション、アップサンプリングなど) ・自然言語処理(潜在的意味インデキシング、Word2vecなど) ・生成モデル(認識モデル、VAEなど) ・深層強化学習(行動価値関数、方策勾配法など) ・さまざまな学習方法(ファインチューニング、ドメインシフトなど) ・深層学習の説明性(XAI、CAMなど) |
開発・運用環境 |
・エッジコンピューティング(IoTデバイス、量子化など) ・分散処理(分散深層学習、モデル並列化など) ・アクセラレータ(GPU、TPUなど) ・環境構築(仮想化環境、ホスト型、コンテナ型など) |
E資格の試験範囲は非常に広いため、余裕を持ったスケジュールで学習を進めることが大切です。認定プログラムを通じて、着実に理解を深めていきましょう。
E資格の取得でおすすめの勉強方法3選
主な勉強方法としては、以下の3つが挙げられます。
- 【必須】JDLAプログラムを受講する
- 書籍を参考にする
- Webで模擬試験を受ける
1.【必須】JDLA認定プログラムを受講する
まずは「JDLA認定プログラム」を受講する方法があります。
こちらは試験を受けるための必須条件であり「試験日までの2年以内に修了していること」が義務付けられています。
認定プログラムは、さまざまな企業から提供されているため、内容・費用・日程などを比較しながら選ぶとよいでしょう。
2.書籍を参考にする
王道の方法ですが、書籍を活用して学習するのもおすすめです。
特に、以下の2冊は日本ディープラーニング協会(JDLA)監修のため、信頼性が高く一読の価値があります。
なお、以下の記事でもAIエンジニア向けのおすすめ本を紹介しています。興味のある方は参考にしてみてください。
3.Webで模擬試験を受ける
本番のイメージをつかみたい場合は、Web上から模擬試験を受けるのがおすすめです。
無料から有料まで公開されているため、求める内容に応じて選択するとよいでしょう。
なお、Web検索からも探せますが、日本ディープラーニング協会(JDLA)の公式サイトから探すと、認定機関による信頼性の高い模擬試験を受けられます。
参考:【学習コンテンツ】E資格の取得を目指す方へ|日本ディープラーニング協会
E資格の難易度・合格率はどれくらい?
E資格の合格率は「70%前後」となっています。
以下は、公式サイトが発表する「開催回ごとの合格率」です。
合格率だけを見ると、それほど難しい試験ではないことが伺えます。とはいえ、受験するには「認定プログラムを修了すること」が条件です。
つまり、受験者はすでに必要な知識を備えたうえで挑んでいます。そう考えると、単純に7割が受かる試験とはいえないでしょう。
簡単に合格できる試験ではないため、学習期間はしっかり確保する必要があります。
E資格を短期間で合格するためのコツ
E資格は100〜300時間の学習が必要であり、さらに認定プログラムの受講も義務付けられています。そのため、効率的に知識を吸収する方法を知っておくことが重要です。
短期間で合格を目指す方は、以下3つのポイントを意識してみてください。
- シラバスの全体像を把握する
- 苦手な分野を見つけ出し反復学習する
- コードに触れながら失敗を繰り返す
1.シラバスの全体像を把握する
学習を始める際は、まずシラバスの全体像をつかむことから始めましょう。
事前に学習すべき内容のボリューム感や苦手分野を把握しておくことで「どの分野に時間をかけるべきか」が明確になります。
もし、全体像をつかまずに勉強を始めてしまうと、それほど重要でない分野に時間をかけすぎてしまい、効率が悪くなる可能性があります。
また、事前に全体像を把握しておくことは、モチベーションを維持するためにも重要です。効率化や挫折防止のためにも、まずはシラバスの流し読みから始めましょう。
なお、E資格のシラバスは「公式サイト」からダウンロード可能です。
2.苦手な分野を見つけ出し反復学習する
資格試験で効率よく点数を伸ばすには、苦手分野を克服することが有効です。
得意分野で確実に点数を取ることも大切ですが、すでに80点を取れている分野を100点にするよりも、40点しか取れていない分野を80点に伸ばすほうが合格に近づきます。
- 得意分野:80点→100点(総得点が20点アップ)
- 苦手分野:40点→80点(総得点が40点アップ)
テストは、100点満点が上限です。上限が決まっている以上、得意分野ばかり勉強しても、伸ばせる点数の幅には限界があります。
したがって、苦手分野をひとつずつ克服していくのが合格への近道になります。全体像を把握し、苦手分野を見つけることから始めましょう。
3.コードに触れながら失敗を繰り返す
学習内容を効率的に記憶へ定着させるには「失敗すること」が重要です。
E資格の勉強においては、実際にコードを書き、試行錯誤を繰り返すことで知識がより深く定着します。
例えば「コードを書いてみたが、エラーが出て正常に動作しない……」という場面に遭遇すると、その解決方法を調べることになります。
この過程を通じて、脳は「失敗した原因」と「うまくいくパターン」を関連付けて学習するのです。
人間は失敗をすることで「記憶力の強化」につながります。つまり、失敗を繰り返すほど、学習した内容がしっかり刻み込まれていくわけです。
参考書や講座で繰り返しインプットすることも大切ですが「失敗」という要素がないため記憶には残りにくいでしょう。
したがって、E資格の勉強を効率よく進めるには、実際にコードに触れながら失敗を繰り返すことが、最短ルートで合格するコツとなります。
E資格の取得で勉強時間を割くのは意味ない?そう言われる3つの理由
Web上では「E資格を取得しても意味がない」という意見を目にすることがあります。そのため、取得を迷う方もいるかもしれません。
しかし、AI分野での活躍を目指す方にとって、E資格の取得は大きな強みとなります。ここからは「E資格は意味がない」と言われる理由と、それに対する見解を解説します。
- 認知度が低くて使い道がない
- 合格率が6〜7割と比較的高い
- 実務経験の証明にならない
1.認知度が低くて使い道がない
まず言われているのが「認知度が低くて使い道がない」という意見です。
E資格は2018年から始まった比較的新しい試験というのもありますが、そもそも国内ではAI技術そのものの導入があまり進んでいません。
総務省の「令和6年版 情報通信白書」によると、国内企業で生成AIを積極的に活用している割合はわずか15.7%と1割程度に留まっています。そのため「取得しても活用できる場所がない」と誤解されることも少なくありません。
とはいえ、AIの認知度は徐々に高まっており、国内でも導入事例が増えてきています。総務省の調査でも、約75%の企業が「業務効率化や人員不足の解消につながると思う」と期待を寄せていることが判明しました。
さらに、経済産業省が2019年に発表した資料によると、AI人材の不足数は2030年までに12万人まで拡大すると予測されています。
したがって、E資格を取得しているエンジニアの需要は今後高まっていくでしょう。
2.合格率が6〜7割と比較的高い
E資格の合格率が6〜7割程度である事実から、その価値に疑問を抱く方もいます。
たしかに、合格率だけを見ると「誰でも受かるのでは?」と感じるかもしれません。しかし、E資格を受験するためには、認定プログラムを修了する必要があります。
この認定プログラムは、決して簡単なものではなく、機械学習やディープラーニングの専門知識を体系的に学ぶカリキュラムが組まれています。
そのため、受験者はすでに一定の学習を積み重ねたうえで試験に挑んでいるのです。
さらに、認定プログラムを修了した受験者のうち「3〜4割は試験に落ちている」という事実もあります。そう考えると、簡単な試験でないと理解できるはずです。
このように、E資格の価値は単純な合格率だけで判断できません。これからAI分野に携わるエンジニアにとって価値の高い資格といえるでしょう。
3.実務経験の証明にはならない
E資格は「ディープラーニングの知識と実装力を有していること」を認定する資格です。
しかし、その本質はあくまでも知識と実装力の証明であり「実務経験の証明にはならない」とその価値に疑問を抱く方もいます。
例として、AIエンジニアの中にも、実務経験が重要と考える方は多くいるでしょう。
とはいえ、先ほどもお伝えした通り、AI分野の人材不足は深刻であり、2030年までに約12万人が不足すると予測されています。
今後AIエンジニアの需要は高まる一方であり、その際に、知識を証明できるだけでも大きな強みになります。資格を持っていることで、現場での経験を積む機会が増え、キャリアを切り開きやすくなるでしょう。
したがって、「実務経験の証明にならない」という指摘があるとしても、E資格へ挑戦する価値は十分にあるといえます。
E資格を取得する3つのメリット
ここからは、E資格を取得する3つのメリットを紹介します。
- ディープラーニングの知識を体系的に習得できる
- AI人材としてキャリアアップの可能性が高まる
- JDLAが主催する合格者限定コミュニティに参加できる
1.ディープラーニングの知識を体系的に習得できる
最大のメリットは、ディープラーニングの知識が体系的に習得できることです。
E資格は「ディープラーニングの理論を理解し、実装できる能力」を認定する資格であり、合格には以下の知識が求められます。
- 数学・統計の基礎知識
- 機械学習の基礎知識
- Python言語の知識
これは、AIエンジニアとして不可欠なスキルです。
ディープラーニングの領域は広く、学習に行き詰まることもあります。しかし、資格取得を目標にすることで、モチベーションを維持しながら計画的に学習を進められるでしょう。
2.AI人材としてキャリアアップの可能性が高まる
資格を取得することで、ディープラーニングを実装できる知識とスキルを有していることを客観的に証明できます。
AIエンジニアの需要は今後ますます高まると予測されており、知識やスキルを証明できる人材は、多くの企業から求められるでしょう。
IDC Japan株式会社の調査によると、国内AIシステムの市場規模は、2023年が6,858億7,300万円でしたが、2028年には2兆5,433億6,200万円まで拡大すると予測されています。
出典:2024年 国内AIシステム市場予測を発表|IDC Japan株式会社
また経済産業省の発表でも、2030年までにAIエンジニアは約12万人が不足すると予測されています。
インターネットが普及したように、AIも今後は「なくてはならない存在」になるでしょう。
したがって、ディープラーニングを適切に実装できる人材は、昇進や転職といったキャリアアップにつながる可能性が高いといえます。
3.JDLAが主催する合格者限定コミュニティに参加できる
E資格に合格すると、日本ディープラーニング協会(JDLA)が主催する限定コミュニティ「CDLE(Community of Deep Learning Evangelists)」に参加できます。
コミュニティに参加することで、専用サイトやSlack、イベントなどを通じて、現役のAIエンジニアと情報交換ができるようになります。
主なメリットは、以下の通りです。
- ディープラーニングに関する最新情報や業界動向などを共有できる
- ディープラーニングについて学び続けるモチベーションを維持できる
- キャリアアップ転職につながる人脈形成や起業の仲間づくりができる
- ディープラーニングに取り組んでいる異業種・異業界の友人ができる
AI分野は凄まじいスピードで進化しており、常に最新情報をキャッチアップするのは大変な作業です。
情報交換をする場があることで、AIエンジニアとして長く活躍できるでしょう。
E資格を活かせる職種2選
ここからは、E資格を活かせる職種の代表例を紹介します。
- AIエンジニア(機械学習エンジニア)
- データサイエンティスト
1.AIエンジニア(機械学習エンジニア)
AIエンジニア(機械学習エンジニア)は、顧客のビジネス課題をAI技術によって解決する技術者です。主にAIシステムの開発や実装を担当します。
ディープラーニングや統計学の知識、Python言語を中心としたプログラミングスキルなどが必要です。よってE資格が活きる職種となります。
AI技術の発展にともない、ビジネスの現場でも導入事例が増えてきています。AIモデルを開発・実装できるエンジニアの需要はますます高まっていくでしょう。
2.データサイエンティスト
データサイエンティストは、AIが分析したデータをもとに、企業のビジネス課題解決や意思決定の支援をする専門家です。
AIが導き出したデータを適切に活用するには、ディープラーニングや統計学の深い知識が不可欠です。よって、E資格を持っていると専門性の証明になり、企業から信頼を得やすくなります。
AIの普及により「データをいかに活用するか」がビジネスのスタンダードになりつつあります。データサイエンティストの需要は、ますます高まっていくでしょう。
E資格以外におすすめのAI資格
AI関連のエンジニア向け資格は、E資格だけではありません。
以下の資格も取得しておくと、今後のキャリアで活きる可能性があります。
資格名 |
内容 |
IT業界で働くための基礎知識とスキルを証明する国家資格 |
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ディープラーニングの実装能力と知識の判別をする資格 |
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Python言語の専門知識を評価する資格 |
各資格の詳細は以下の記事で解説しています。もし興味がある方は、ぜひ参考にしてみてください。
まとめ:E資格の勉強時間は100〜300時間が必要!まずは認定プログラムを受講しよう
E資格の勉強時間は、一般的に100〜300時間が目安とされています。
合格率は6〜7割と比較的高めですが、これは事前に認定プログラムで必要な知識を体系的に学んだうえで受験するためです。短期間での取得は難しく、数ヶ月単位で計画的に学習を進める努力が求められます。
とはいえ、その分だけE資格の価値は高く、取得することでAIエンジニアとして専門性を証明できます。
近年、AI市場は急速に拡大しており、それにともない資格保持者の需要も高まっています。E資格を取得し、キャリアの可能性を広げていきましょう。