プロンプト設計は”指示の技術”である

生成AI、特にChatGPTのようなツールは、単なる「質問応答マシン」ではありません。実際は、人間が持つ情報処理の一部を代替するパートナーであり、その力を引き出す鍵が”プロンプト設計”です。

プロンプトとは、「AIへの指示文」

プロンプトとは、AIに「どう反応してほしいか」を伝えるための言語的な命令文です。たとえば次のような指示の違いを見てください。

• 悪い例：「営業の文章を作って」
• 良い例：「30代男性向けの保険営業メールを、3パターン、キャッチコピー付きで作って」

両者の差は明白です。後者のほうが、対象、形式、件数、構成までが明確で、AIも的確なアウトプットを出しやすくなります。

ビジネスでは「任せる力」が重要になる

人に業務を任せる隙と同じように、AIに任せるにも「前提の共有」「目的の明確化」「成果物の期待値」が必要です。つまりプロンプト設計とは、指示を論理的に組み立てる力、すなわち”ビジネスコミュニケーションの応用形”とも言えます。

特に以下のような場面では、プロンプトの出来が成果を左右します。

• アイデア出し：どんな観点で、どのくらいの数を、どういう視点で出すか？
• 要約依頼：誰向けに、どの程度まで、どんな文体で？
• スライド作成：構成は？対象読者は？使う資料は？

ChatGPTを「共創パートナー」に変える

プロンプトをうまく設計できる人は、AIを「指示待ちマシン」ではなく、「一緒に考えてくれる相棚」に変えられます。あなたの脳内にあるアイデアや構想を言語化し、共に形にしていく過程で、ChatGPTはまさに”第二の脳”として機能し始めるのです。

実務で使える「応用プロンプト」

基本型プロンプトに慣れてきたら、次は実務に直結する「応用プロンプト」へステップアップしましょう。ここでは、特にビジネスの現場で重宝される2つのカテゴリに焦点を当てます。

① データ要約用プロンプト：情報の洪水を”要点”に変える

たとえば営業会議の議事録、顧客インタビュー、SNSのコメントなど、大量のテキスト情報を前にして「で、結局何が重要なの？」となることは日常茶飯事です。

テンプレ例：
「以下の議事録を、3つの主要議題とそれぞれの結論に分けて要約してください。出力は箇条書き形式で、経営層向けの要点に絞ってください。」

実務応用：

• 営業活動報告の要点抽出
• クライアントMTGの報告書化
• インタビューからのインサイト抽出

② クリエイティブ用プロンプト：アイデアの”引き出し”を開く

企画、構成、コピーライティングなど、創造性が求められる場面でもChatGPTは力を発揮します。特にアイデアの”量産フェーズ”で頼れる存在です。

テンプレ例：
「30代の働く女性向けに、”時短で健康的な朝食”をテーマにした記事のタイトル案を10個出してください。親しみやすく、SNSで拡散されやすい文体にしてください。」

実務応用：

• メルマガやLPのタイトル案出し
• キャッチコピーの初稿生成
• 商品企画ブレストの材料出し

テンプレート化すれば”迷わない”

プロンプト設計を繰り返していると、「あの時の構文、また使いたいな」「似たような依頼だけど、前回どう書いたっけ？」という場面が増えてきます。そんな時に威力を発揮するのが”テンプレート化”です。

なぜテンプレート化すべきか？

プロンプトは、ある程度「型」が決まっていることで使いやすく、再現性が高まります。毎回ゼロから設計するのではなく、自分なりの”使い回し可能な型”を持っておくことで、スピードも品質も格段に向上します。

さらに、テンプレートとして保存・管理しておけば、チームでの共有も可能に。属人的な「プロンプトのうまさ」から脱却し、組織的なAI活用の基盤を築くことができます。

管理のコツ：NotionやGoogleドキュメントを活用

おすすめは、NotionやGoogleドキュメントなどでのテンプレート管理です。以下のような項目で整理すると、あとから見返すときにも便利です。

• タイトル（例：議事録要約テンプレ）
• 用途・目的（例：営業会議の内容を部長向けにまとめる）
• テンプレ構文
• 使用上の注意点・コツ
• 実際の出力例

「テンプレ資産」は育ててこそ価値がある

テンプレートは「作って終わり」ではありません。実務での使用→改善→再利用を繰り返すことで、徐々に”自分（またはチーム）に最適化された資産”へと進化します。

ChatGPTは、学習するAIではなく「都度指示されるAI」です。だからこそ、プロンプトという”入力品質”を高めるためのテンプレ管理は、AI活用のボトルネックを解消する大きな武器になるのです。

設計だけで終わらせない「評価と改善」

プロンプトは”一発勝負”ではありません。初回の出力が期待通りでなくても、微調整を重ねていくことで、精度の高いアウトプットへと近づけることができます。ここではその「改善のサイクル」を紹介します。

成果を測る「3つの評価観点」

プロンプトの良し悪しは、次のような軸で評価すると明確になります。

1. 正確性：意図した内容が出力されているか
2. 一貫性：出力のトーン・構造にブレがないか
3. 効率性：手戻りなく業務に使える内容か

例えば、「内容は合ってるけど、構成がグチャグチャ」「丁寧だけど長すぎて社内報告に向かない」といった場合は、何を修正すればよいかが見えてきます。

PDCA的に回す「プロンプト最適化サイクル」

効果的な改善には、次のようなサイクルを意識すると良いでしょう。

• Plan（設計）：目的に応じて構文を組み立てる
• Do（出力）：ChatGPTで生成し、結果を確認
• Check（評価）：評価軸に沿って出来栄えを確認
• Act（改善）：文体・語彙・構成などを調整

このサイクルを回す中で、「自分なりのプロンプトスタイル」が確立されていきます。

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この記事の監修
黒山結音 - Sooon株式会社COO。「AI×営業」などの最先端ノウハウを発信。ChatGPT、Gemini、FeloなどのAIツールを活用した営業効率化手法を開発し、非エンジニアでも実装可能なメソッドを指導。「GMOコラボ 生成AI大感謝祭」に登壇者として、「AIグランプリ2025 春」に審査員として参加。生成AIパスポート保持 / Feloアンバサダー / tl;dvパートナー