AIの勉強は何から始めればいい?ロードマップと学習方法を解説

「AIの勉強を始めたいが何をすればいいのかわからない……」
「初心者はどんな方法で学ぶのがいいんだろう?」
「おすすめな本や学習サイトがあれば知りたい」
最近は、文字起こし・画像生成・情報収集・コーディングなど、さまざまな分野でAI技術が活用されるようになりました。
AI技術は仕事や生活に大きなインパクトを与えており、その話題から興味を持ち始める方も、日を追うごとに増えています。
とはいえ、ITにあまり詳しくない方は「AIってなんだか難しそう」「勉強したいが自分に理解できるだろうか」と不安があるかもしれません。
そこで本記事では、知識ゼロの初心者にもおすすめできるAIの勉強手順・具体的な方法を紹介します。読み終えるころには、AIを理解するための第一歩を踏み出せるでしょう。ぜひ参考にしてみてください。
AIを勉強する重要性
まずはモチベーションを高める意味合いも込めて、AIを勉強する重要性を解説します。
AIが注目されている背景には、以下に挙げる3つの影響があります。
- 年収アップが期待できる
- 業務効率化が大幅に進む
- 多くの仕事がAIに代替され始めている
順番に見ていきましょう。
1.年収アップが期待できる
AIの基礎や使い方を理解することで、今よりも年収アップが期待できます。なぜなら、AIに関するスキルを持つ人材の市場価値は、今後高まり続けるからです。
一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)が2023年12月に発表したデータによると、日本における生成AI市場は「2030年までに年平均47.2%増で成長」「需要額は1.8兆円の規模で拡大」と予測されています。
出典:JEITA、生成AI市場の世界需要額見通しを発表|一般社団法人電子情報技術産業協会
また、経済産業省が2019年に公表した調査結果によれば、2030年にはIT人材が約79万人も不足すると見込まれています。
こうした人手不足の背景から、AIを理解しているIT人材の市場価値は高まっていくと予想できます。特にAIを実装・管理できるエンジニアは、高収入を獲得できるでしょう。
2.業務効率化が大幅に進む
AIの活用スキルを身につけることで、さまざまな業務を効率化できます。
例えば、以下の通りです。
- 会議内容を自動で文字起こし・要約
- 顧客に送信するメール作成案を自動生成
- パターン化された問い合わせ対応を自動化
- ビッグデータの分析から効果的な営業戦略を立案
- データ入力の自動化でヒューマンエラーの防止
AIは人間が指示したことを繰り返したり、大量のデータを処理したりすることが得意です。そのため、単純作業やデータ処理はAIに任せて、人間は創造力や感情的コミュニケーションに注力すれば、大幅な生産性アップが期待できます。
また、残業時間が減ると、ワークライフバランスを維持しやすくなるのもメリットです。心身の健康が保たれることで、短時間でも高いパフォーマンスを発揮できるようになります。
結果、社会人として高い評価を得やすくなるでしょう。
3.多くの仕事がAIに代替され始めている
近年は、AI技術が急激に進化しており、さまざまな仕事がAIに代替され始めています。
例えば、以下の通りです。
- データ管理や計算などの事務作業
- カスタマーセンターの問合せ対応
- スーパーやコンビニのレジ打ち
- タクシーや電車の自動運転
- 工場や倉庫での検査・検品
- 施設内の清掃や警備
- ホテルのチェックイン・チェックアウト
どの業務も、まだ完全に仕事を奪われているわけではありません。しかし、このままAI技術が進化していけば、人の手が必要なくなる日が来るのも時間の問題でしょう。
実際、2015年に発表された、株式会社野村総合研究所とオックスフォード大学の研究結果によると「10〜20年後に日本の労働人口の49%が人工知能やロボットで代替可能になる」とのことです。
参考:AIの導入によって日本の労働人口の49%の仕事が10-20年以内になくなる|株式会社野村総合研究所
とはいえ、AIがどれだけ進化しても、AIに指示を出して動かす・自動化した業務の責任を取る人材の需要はなくならないでしょう。
そういったAIを活用する側になるには、基礎知識や活用方法について深く理解しておく必要があります。どのような未来にも対応できるように、今のうちから知識やスキルを身につけておきましょう。
AI勉強のロードマップ!具体的な手順5ステップ
ここからは、知識ゼロからAIを勉強するロードマップを紹介します。
目標や興味関心によって学習内容に多少の変化はあるものの、基本的には以下5つの手順で学んでいくのがおすすめです。
- 学ぶ目的を明確にする
- 知識・スキルの全体像を把握する
- 機械学習や深層学習の基礎を学ぶ
- 数学や統計学の基礎を学ぶ
- Pythonの基礎を学ぶ
順番に解説します。
1.学ぶ目的を明確にする
まずは、AIを学ぶ目的を明確にすることが大切です。目的を明確にすることで「勉強のやる気と継続率」を高められます。
後述しますが、AIの基礎を完全理解するには、機械学習や深層学習、数学や統計学のような少し難しい内容も学ばなければなりません。
もし、目的意識がないまま勉強に入ってしまうと「自分には理解が難しそうだから……」「面倒になってきたから……」と早々に挫折してしまう可能性があります。
そこで、以下のように明確な目的を持ってください。
- 将来のために教養を身につけておきたい
- 今の仕事をAIで効率化する方法を知りたい
- AIでこんなアプリやサイトを作ってみたい
- AIを活用できる人材になって高収入を得たい
- 職場でAI導入を勧めて会社の役に立ちたい
このように学ぶ目的を明確にしておくと、モチベーションを下げずに学び続けられるでしょう。
2.知識・スキルの全体像を把握する
学ぶ目的を明確にしたら、AIに関する知識・スキルの全体像を把握しましょう。
「目的達成のために勉強すべき内容」を理解することで、学習計画を立てやすくなります。
AIの基礎を身につけるには、大きく分けて以下の3つを学ぶ必要があります。
- 機械学習と深層学習
- 数学や統計学
- Python(プログラミング言語)
上記の基礎を身につければ、文章生成や画像生成のようなツールも、仕組みを理解して活用または開発できるようになります。
3.機械学習や深層学習の基礎を学ぶ
全体像を把握したら、AI技術の仕組みを支えている「機械学習(マシンラーニング)」「深層学習(ディープラーニング)」の基礎を学んでいきましょう。
- 機械学習:大量のデータから規則性やパターンを抽出する技術
- 深層学習:人間の神経細胞の仕組みを再現した機械学習の手法
機械学習や深層学習の理論は奥が深いため、完全理解しようとする必要はありません。学びすぎても挫折の原因になるため、基本的な概念や仕組みだけを学ぶのがおすすめです。
4.数学や統計学の基礎を学ぶ
AIが得意とするデータ処理や分析について理解を得るには、数学や統計学の知識も関わってきます。
具体的には以下の通りです。
- 微分積分
- 確率統計
- 線形代数
上記を学んでおくと「AIはどのように予測をしているのか?」を理解しやすくなります。
ただし、数学や統計学も高度な内容を学ぶ必要はありません。挫折を防ぐためにも最低限の基礎だけにとどめておきましょう。
5.Pythonの基礎を学ぶ
Python(パイソン)は、AI分野で広く使用されているプログラミング言語です。
AI開発の現場に携わりたいエンジニアはもちろん習得すべきですが、非エンジニアもITへの理解度を深めるきっかけになります。
また、自分でツールに自動化要素を追加できるようになるのもメリットです。他のプログラミング言語よりも比較的易しいレベルになっているため、実際にコードを書きながら学んでみましょう。
初心者向けAIの勉強方法おすすめ4選
初心者がAIの勉強を始める方法としては、主に以下の4つが挙げられます。
- 専門スクール
- 学習サイト
- 本・参考書
- コミュニティ・勉強会
順番に見ていきましょう。
1.専門スクール
近年のAI普及を受けて、AI関連の専門スクール(オンライン可)も増えてきました。
AI学習は独学でも進められますが、質問・相談ができない環境で知識の定着に時間がかかったり、モチベーションが続かずに挫折してしまったりする方も少なくありません。
その点、専門スクールは必要な知識を体系的に身につけながら、わからない点はすぐに質問・相談できる環境が整っています。そのため、独学よりも効率よく学習を進められるでしょう。
2.学習サイト
専門スクールと同じく、昨今はAI関連の学習サイトも増加しています。
無料から有料までさまざまな学習サイトがありますので、目的に応じて最適なものを選ぶといいでしょう。
AIの主な学習サイト
ただし、無料サイトは質問・相談ができないケースが多いです。挫折しないか心配な方は、有料サイトもしくは専門スクールの受講をおすすめします。
3.本・参考書
独学で挫折しない自信があるなら、本や参考書で学ぶのもおすすめです。AI関連の本も基礎概念から応用テクニックまで、さまざまな分野が出版されています。
例えば、以下の本は初心者でも読みやすいでしょう。
本や参考書で学習するメリットは、自分のペースで学びを進められる点です。毎日忙しくてスキマ時間しか活用できない方にぴったりな学習方法といえます。
とはいえ、自分のペースで学習できるのは、いつでも諦められるというデメリットにもなることに注意は必要です。
また、AIは目まぐるしい速度で進化を続けています。
発売日が古い本(特にノウハウ系の実用書)は、情報も古くなっている可能性が高いため、なるべく1年以内に発売された本から選びましょう。
4.コミュニティ・勉強会
AI分野は、各所でコミュニティイベントや勉強会が開催されていることも多いです。
時間や場所に制約は生まれてしまいますが、講師や受講者と会話をしながら楽しく学べるのは魅力的です。
AI関連のコミュニティ・勉強会を探す際は、以下のようなサイトを参考にするとよいでしょう。
コミュニティや勉強会の中には、自習形式やオンライン形式で開催されていることもあります。さまざまな方法で参加できますので、自分に合うものを探してみてください。
AIの勉強に役立つ資格3選
AIの基礎学習を効率よく学ぶ手法として、資格取得を目指すのもおすすめです。
AI関連の仕事に資格が必須というわけではありません。とはいえ「AIの基礎知識を理解している証明」になるため、今後のキャリアで役に立つ可能性はあります。
もし興味があるなら、以下の資格取得にもチャレンジしてみてください。
- G検定
- E資格
- Pythonエンジニア認定試験
順番に紹介します。
1.G検定
運営 |
一般社団法人 |
料金(税込) |
一般:13,200円 学生:5,500円 ※各種割引制度あり |
試験時間 |
120分 |
公式サイト |
G検定は、一般社団法人日本ディープラーニング協会が運営する「AI・ディープラーニングの活用リテラシー習得のための試験」です。
具体的には、以下を学べます。
- AIで何ができて、何ができないのか
- どこにAIを活用すればよいのか
- AIを活用するために何が必要か
資格勉強に励むことで、AIとディープラーニングの基礎知識を体系的に習得できます。誰でも受験できるため、キャリアの可能性を広げたい方は挑戦してみてください。
2.E資格
運営 |
一般社団法人 |
料金(税込) |
一般:33,000円 学生:22,000円 会員:27,500円 |
試験時間 |
120分 |
公式サイト |
E資格は、一般社団法人日本ディープラーニング協会が運営する「ディープラーニングを適切に実装する能力やスキル」を証明するエンジニア向けの資格です。
誰でも受験できるG資格と異なり、E資格は「JDLA認定プログラム受講修了者のみ」が対象者になります。
難易度は高いものの、資格取得することでAI関連企業の即戦力として働けます。
3.Pythonエンジニア認定試験
運営 |
一般社団法人Pythonエンジニア育成推進協会 |
料金(税込) |
Python 3
一般価格:11,000円 学割価格:5,500円 |
試験時間 |
60分 |
公式サイト |
Pythonエンジニア認定試験は、一般社団法人Pythonエンジニア育成推進協会が運営する「プログラミング言語Python(パイソン)の専門知識」を評価する試験です。
試験は、以下の4種類があります。
- Python 3
エンジニア認定基礎試験 - Python 3
エンジニア認定データ分析試験 - Python 3
エンジニア認定実践試験 - Python3エンジニア認定データ分析実践試験
初学者は「Python 3 エンジニア認定基礎試験」から受けるとよいでしょう。
公式認定テキストや公式問題集も販売されていますので、受験者は購入して勉強するのもおすすめです。
独学でAIを勉強するときの注意点2つ
AI学習を独学で進めたいと考えている方も多いでしょう。
もし独学で進める際は、以下2つの注意点を認識したうえで取り組むことが大切です。
- 疑問点を質問できずに挫折する可能性がある
- 間違った知識が定着するおそれがある
順番に解説します。
1.疑問点を質問できずに挫折する可能性がある
独学における最大のデメリットは、疑問点を気軽に質問できない点です。
例えば、エラーが発生した際は、自力で何らかの解決策を探さなければなりません。参考書やインターネットに明確な解決策がなく、そのまま学習を諦めてしまう人もいます。
そのため、周りに質問できる人がいないのであれば、専門スクールや勉強会などを活用したほうがスキル習得の確度は高くなります。
2.間違った知識が定着するおそれがある
独学をする際は、間違った知識が定着するリスクにも注意が必要です。
インターネットにはさまざまな情報が存在しますが、必ずしも正しい情報であるとは限りません。
例えば、以下のような情報も含まれています。
- 同じ動作でも効率や見栄えが悪い
- セキュリティ面で安全ではない
間違った情報に気がつかずに学習を進めてしまうと、その場では問題なくても、いずれ重大なトラブルに発展する可能性もあります。
またAI分野は進化スピードが速く、参考にした情報もすぐに古くなるでしょう。
ご自身で情報の質を判断できるのなら問題ありませんが、少しでも不安がある方は、信頼できるスクールや教材を活用するのがおすすめです。
AIを勉強した後に目指せる主なキャリアパス3選
最後に、AIに関する知識・スキルを身につけた後に目指せる代表的なキャリアパスを3つ紹介します。
- 機械学習エンジニア
- データサイエンティスト
- AIプランナー
1.機械学習エンジニア
機械学習エンジニアは、コンピューターに自ら学習させる能力を与える技術者です。大量のデータを分析・予測するために必要なアルゴリズムを構築します。
機械学習は自然言語処理から、音声や画像の認識技術など、AI領域におけるさまざまな分野で活用されています。よって、システムやサービスを自動化させるうえで、機械学習エンジニアの存在は欠かせません。
プログラミングスキルだけでなく、データ分析や統計学など幅広い知見が必要になりますが、これから大きく需要が高まる仕事といえるでしょう。
2.データサイエンティスト
データサイエンティストは、ビッグデータを分析し、企業の課題解決や意思決定に役立つ情報を抽出・提案する専門家です。
例えば、新製品開発や顧客満足度向上にまつわる企画・戦略の立案に貢献します。
近年は、AI技術の発展により、企業が自分たちだけでも高度なデータ分析をできるようになりました。
しかし、データサイエンティストが持つ機械学習や統計学の知識があれば、AI技術をさらに有効活用できます。そのため、今後も高い需要を維持し続けるでしょう。
データサイエンティストになるには、AI分野の知識・スキルに加えて、各業界に関する深い知識とコンサルティング能力が求められます。多くの学びが不可欠ですが、企業の成長に大きく貢献できるのが魅力的です。
3.AIプランナー
AIプランナーは、AIに関する知識・スキルを活用して、企業のビジネス課題を解決する計画や実行をする専門家です。
具体的には、以下のような仕事に取り組みます。
- クライアントの課題をヒアリングする
- その課題をAI技術で解決する方法を考える
- AIエンジニアやデータサイエンティストと連携しながら、プロジェクトを管理する
実際にAIを開発するのはAIエンジニアの仕事ですが、エンジニアだけではビジネス課題を解決できない場合もあります。そのため、AI分野とビジネス分野の両方に詳しい「AIプランナー」と、AI開発の技術力に優れた「AIエンジニア」の協力体制が必要になります。
AI開発の現場をマネジメントするには、土台となるAI分野の詳しい知見が不可欠です。よって、これから大きく需要を伸ばす職種になるでしょう。
まとめ:AI技術を勉強して市場価値を高めよう
AI技術はこれからますます普及すると予想されており、AIについて正しい知識を持っている人材は多くの企業から重宝されるでしょう。
AIの仕組みを理解するには、機械学習や深層学習、統計学やPython(パイソン)の基礎を学ぶことが重要です。
すぐに習得できる知識ではありませんが、少しずつ勉強を進めて、社会人としての市場価値を高めていきましょう。