なぜ近年の動画編集単価は低いのか？

動画編集市場が抱える構造的な問題を理解することが、単価アップへの第一歩です。

なぜこれほどまでに単価が低迷しているのか、その背景にある3つの要因を見ていきましょう。

 

参入障壁が極端に低い

動画編集業界の最大の特徴は、参入障壁の低さです。

YouTubeには無料の編集チュートリアルが無数にアップされており、オンラインスクールも数ヶ月のカリキュラムで基礎から応用まで学べる環境が整っています。

編集ソフトも、かつては高価だったPremiereProやFinalCutProが、月額制やサブスクリプションで手軽に利用できるようになりました。

 

その結果、誰でも数ヶ月の学習で「動画編集者」を名乗れるようになりました。

これ自体は素晴らしいことですが、市場には膨大な数の駆け出しクリエイターが参入し、熾烈な低価格競争が繰り広げられています。

 

特にクラウドソーシングサイトでは、実績作りのために1本3,000円、2,000円という価格で受注する初心者が後を絶ちません。

発注者側からすれば、同じような編集レベルなら安い方を選ぶのは当然です。

 

こうして市場全体の価格相場が下がり続けるという悪循環が生まれています。

 

YouTube案件の「コモディティ化」と単価の固定化

YouTube編集案件は、作業内容が極度に定型化されています。

 

• カット
• テロップ挿入
• BGM・効果音の配置
• サムネイル作成

 

上記の工程はほぼパターン化されており、編集者による差別化要素がほとんどありません。

 

このコモディティ化により、YouTube編集は「誰がやっても同じ」と認識されます。

1本あたりの相場も、5,000円から1万円で固定されてしまいました。

 

たとえあなたが丁寧な仕事をしても、経験豊富でも、価格交渉は非常に困難です。

なぜなら発注者は「これが相場だから」という認識で依頼してくるから。

 

作業時間を短縮すればするほど時給は上がりますが、単価自体は上がりません。

効率化は重要ですが、それだけでは限界があります。

 

発注者側（クライアント）の知識不足

動画制作の価値を正しく理解していない発注者が多いことも、単価低迷の一因です。

 

「動画を作れば売れる」「YouTubeに投稿すれば視聴者が増える」といった誤解。

動画制作を単なる作業としか見ていない企業や個人事業主が少なくありません。

 

• 企画立案
• ターゲット分析
• 構成設計
• 撮影
• 編集
• 分析や改善

 

本来は上記のような複数の工程があり、それぞれに専門知識と経験が必要です。

しかし知識不足の発注者は、編集作業だけを切り離して外注し、「動画を形にする」ことだけに報酬を支払います。

 

結果として、企画や戦略にかかる費用が削られ、編集作業費のみが報酬に。

これでは、どれだけ編集スキルを磨いても単価は上がりません。

 

動画編集者の単価が低い理由は商流の末端にいるから

あなたの単価が低い理由は、編集スキルの問題ではありません。最大の原因は、あなたが「商流の末端」にいるからです。

 

動画業界の「発注ピラミッド」と利益の構造

動画制作業界には、明確な発注ピラミッド構造が存在します。その構造は次のようになっています。

 

企業（クライアント）→広告代理店→制作会社（ディレクション）→編集者（あなた）

 

例えば、ある企業が500万円の予算で動画制作を発注したとします。

この案件は広告代理店に発注され、代理店はマージンとして100万円を取り、残り400万円で制作会社に外注。

制作会社は企画やディレクションを担当し、200万円を自社で確保し、残り200万円で撮影や編集を外注します。

 

そして最終的に、編集者であるあなたの手元には50万円から100万円程度しか残りません。

 

特にYouTube編集代行会社を経由する場合、構造はさらに複雑になります。

企業から代行会社へ、代行会社から編集者へ。

中間マージンが何重にも引かれ、編集単価は驚くほど削られていきます。

 

この構造において、末端にいる編集者の取り分が少ないのは構造上避けられません。

どれだけ編集スキルを磨いても、この商流にいる限り単価は上がらないのです。

 

単価を決定づける「役割」の違いは作業者かパートナー

商流における立ち位置の違いは、クライアントから見たあなたの役割の違い。

ここには明確な2つのタイプが存在します。

 

下請け編集者は、決められた指示通りに編集する「オペレーター」です。

クライアントや制作会社から「この素材をこう編集してください」と指示を受け、その通りに作業します。

この場合、単価は「作業時間」で決まります。

1本あたり何時間かかるか、時給換算でいくらかという発想です。

 

一方、直案件クリエイターは、企画・構成・戦略から提案する「ビジネスパートナー」です。

クライアントの課題を聞き取り、「このターゲットにはこういう動画が効果的です」「この構成なら視聴維持率が上がります」と提案します。

 

単価は「動画の成果（売上、認知度、問い合わせ数）」で決定。

同じ編集作業でも、オペレーターとして見られるかパートナーとして見られるかで、単価は5倍、10倍と変わるのです。

 

そして、商流の末端にいる限り、あなたはオペレーターとしてしか扱われません。

 

稼いでいる動画編集クリエイターが制作スキルを語らない理由

高単価で活躍しているクリエイターのSNSやブログを見ると、興味深いことに気づきます。

 

彼らはあまり編集技術について語りません。

代わりに、「このクライアントの売上を3倍にした」「採用動画で応募数が2倍になった」「ブランディング動画でファンが増えた」といった成果を語ります。

 

なぜでしょうか？答えは簡単。彼らは直案件の価値を知っているからです。

編集技術は前提条件であり、差別化要素ではありません。

クライアントが求めているのは、綺麗なエフェクトではなく、ビジネス上の成果です。

 

高単価クリエイターは、編集スキルではなく「その動画でクライアントの課題をどう解決したか」を語り自分の価値を証明します。

そしてそれが、次の高単価案件につながっていくのです。

 

低い価格とおさらば！動画編集スキル以外で収入を高める5つの要素

直案件を獲得し、高単価クリエイターになるためには、編集スキル以外の要素が必要です。

ここでは、単価を決定づける5つの重要な要素を解説します。

 

企画・構成台本（シナリオ）作成スキル

編集前の段階でクライアントの目的達成にコミットできるかどうかが、単価を大きく左右します。

多くの編集者は、クライアントから渡された素材を編集するだけです。

しかし、高単価クリエイターは企画段階から関わります。

 

具体的には、動画の目的（認知拡大、商品販売、採用強化など）を明確に。

ターゲット層を設定し、そのターゲットに刺さる構成を提案します。

さらに、台本を作成して納品物に含めることで、単価を大幅にアップさせるのです。

 

例えば、通常の編集だけなら1本1万円の案件でも、企画と台本作成を含めれば3万円、5万円と価格設定できます。

なぜなら、編集作業だけでなく、動画の成果に責任を持つ立場になるからです。

 

• マーケティングの基礎知識
• ターゲット分析
• 競合調査
• ストーリーテリングの技術

 

企画・構成スキルを身につけるには上記を学ぶ必要があります。

これらは編集ソフトの使い方とは別のスキルですが、単価アップには不可欠です。

 

マーケティングと分析（ディレクション）スキル

動画は公開して終わりではありません。公開後のデータを分析し、次の動画に活かす提案ができるかどうか。

それがクリエイターの価値を決めます。

 

• 視聴維持率
• クリック率
• 平均視聴時間
• 視聴者属性

 

YouTubeならこのようなデータを読み解き、「この部分で離脱が多いので、次回はテンポを上げましょう」「サムネイルのクリック率が低いので、デザインを変えましょう」といった改善提案ができることが重要です。

 

企業案件であれば、動画経由のコンバージョン率（問い合わせ数、購入数、応募数など）を測定。

PDCAを回せる人材は、単なる編集者ではなく「ディレクター」として扱われます。

ディレクター料金は編集料金の3倍から5倍が相場です。

 

マーケティングと分析スキルはGoogleAnalyticsの基礎やYouTubeアナリティクスの読み方、SNSマーケティングの知識などを学ぶことで身につけましょう。

これらのスキルがあれば、クライアントにとって「手放せないパートナー」になれます。

 

撮影を含めたワンストップ対応力

編集だけでなく、撮影も含めたワンストップ対応ができると、中間マージンを全て獲得できます。

企業が外部に発注する予算を、全てあなたが受け取れるということです。

 

例えば、企業が動画制作に100万円の予算を持っているとします。

従来の商流では、制作会社が撮影チームと編集者を手配し、それぞれにマージンを取ります。

しかし、あなたが撮影から編集までワンストップで対応できれば、100万円の案件を直接受注できるでしょう。

 

撮影のワンストップ対応には、以下のスキルが必要です。

• カメラ機材の知識
• 照明やマイクの選定
• 撮影ディレクション
• ロケーション選定

 

初期投資として機材費用もかかりますが、一度揃えてしまえば、単価は劇的に上がります。

 

特に企業のブランディング動画や商品紹介動画、採用動画、セミナー撮影などは、ワンストップ対応できるクリエイターに案件が集中します。

編集だけのクリエイターとは、単価の桁が違うため習得すべきスキルでしょう。

 

特定ジャンルへの「専門特化」（ニッチ戦略）

「何でも編集できます」という万能型クリエイターよりも、特定ジャンルに特化した専門家の方が高単価を獲得しやすい傾向があります。

これはニッチ戦略と呼ばれる考え方です。

 

「教育系動画のファストカット編集に特化」「不動産業界の物件紹介動画専門」「医療機関の患者向け説明動画に特化」といった形で得意分野を尖らせましょう。

そのジャンルにおける専門家としてのポジションを確立できます。

 

専門家は比較検討されにくく、価格競争から抜け出せます。

なぜなら、「不動産動画のことならこの人」という認識が広まれば、他の編集者と比較する必要がなくなるからです。

 

特化するジャンルは、自分の興味関心、過去の経験、業界の成長性などを考慮して選びましょう。

そして、そのジャンルに関する知識を深め、業界特有の用語やニーズを理解してください。

クライアントから信頼される専門家になれます。

 

納品後の「伴走」とクライアントとの交渉術

一度きりの取引で終わらせず、長期的なパートナーシップを提案する力も単価アップには重要です。

例えば、月額顧問契約という形で、継続的に動画制作やコンサルティングを提供する関係を築けば収入は安定し、単価も上がります。

 

月額30万円で毎月2本の動画制作とマーケティング相談を提供する契約なら、1本あたり実質15万円の単価に。

さらに、クライアントとの信頼関係が深まれば、追加案件や紹介案件も生まれやすくなります。

 

また、見積もりを提示する際の交渉術も重要です。

多くの編集者は「作業時間×時給」で見積もりを出しますが、これでは単価は上がりません。

代わりに、「この動画によって得られる成果」を基準に見積もりを提示しましょう。

 

例えば、「この採用動画によって採用コストが100万円削減できるなら、制作費として30万円いただくのは妥当です」といった形に。

投資対効果を示すことで、クライアントも納得しやすくなります。

価値ベースの価格設定は、高単価クリエイターの必須テクニックです。

 

動画編集者が高単価な直案件を獲得する戦略

ここからは、実際に高単価な直案件を獲得するための具体的な行動プランを解説します。

クラウドソーシング依存から脱却し、企業と直接取引するための戦略です。

 

クラウドソーシングの正しい使い方は実績稼ぎ

クラウドソーシングサイトは、決して悪ではありません。

使い方次第で、効果的な実績作りの場になります。

ただし、そこに留まり続けることが問題なのです。

 

クラウドソーシングを利用する目的は、評価と企業名実績を獲得すること。

低単価でも構わないので、「評価5点満点」「継続依頼率の高さ」「企業名が公開できる実績」を積み上げましょう。

これらは後のポートフォリオで武器になります。

 

そして、明確な卒業基準を設けることが重要です。

「評価50件、5点平均を達成したら卒業」「企業案件10件の実績ができたら卒業」などの、期限を決めてクラウドソーシングを利用しましょう。

 

多くの編集者が陥る罠は、クラウドソーシングに依存し続けることです。

そこには高単価案件はほとんどありません。

実績が貯まったら、すぐに別の営業チャネルへ移行することが、単価アップの近道です。

 

企業へ響く「成果主義ポートフォリオ」への刷新

直案件を獲得する上で最も重要なのが、ポートフォリオです。

しかし、多くの編集者のポートフォリオは、企業に響きません。

なぜなら、「使ったソフト」や「技術力」ばかりをアピールしているからです。

 

企業が知りたいのは、あなたの編集スキルではなく、「この人に依頼したら、自社のビジネスにどんな成果をもたらしてくれるのか」です。

ポートフォリオは成果主義で作り直す必要があります。

 

具体的には、各作品について「課題→解決策→結果」の流れで説明しましょう。

 

1. 「クライアントは採用に苦戦していた（課題）
2. 社員インタビュー形式の動画を提案し、企業文化を伝える構成にした（解決策）
3. 結果、応募数が前年比150%に増加した（結果）」

 

数字で示せる成果があれば必ず記載しましょう。

視聴回数や再生維持率、コンバージョン率や売上増加額など、定量的なデータは説得力があります。

成果を示せない場合でも、「クライアントから高評価のコメント」を掲載することで、信頼性を高められるのです。

 

ポートフォリオは、単なる作品集ではなく、提案資料。

企業の担当者が見て、「この人なら自社の課題を解決してくれそうだ」と思わせることがゴールです。

 

主体的な営業戦略はテレアポ・問い合わせフォーム営業

クラウドソーシングを介さず、企業と直接つながる最も効果的な方法は、テレアポや問い合わせフォームからの営業です。

これは多くの編集者が避けている方法ですが、だからこそ競合が少なく、成功率が高いのです。

 

まず、動画制作が必要な企業を見つけます。具体的には、次のような企業が狙い目です。

 

• SNS運用を始めたばかりで、動画投稿が少ない企業
• 採用ページに動画がない、または古い企業
• 商品紹介が文章と画像だけで、動画がない企業
• 競合他社は動画を活用しているのに、自社は対応していない企業

 

こうした企業を見つけたら、企業の公式サイトの問い合わせフォームや、FacebookやInstagramのDM機能を使って直接アプローチします。

メッセージは簡潔に、相手のメリットを明確に伝えましょう。

 

例えば、「貴社のInstagramを拝見しましたが、動画投稿を増やすことでエンゲージメント率が大幅に向上する可能性があります。

実際に、同業他社様では動画導入後にフォロワー数が3ヶ月で2倍になった事例があります。

無料で企画案をご提案させていただけないでしょうか」といった形です。

 

最初は断られることも多いですが、100件アプローチすれば数件は反応があります。

そこから1件でも受注できれば、クラウドソーシング経由の10件分の収入になることもあります。

 

信頼を獲得する「発信力」の強化（SNS/ブログ）

直案件を継続的に獲得するには、自分自身の認知度と信頼性を高めることが重要です。

そのための最も効果的な方法が、SNSやブログでの情報発信です。

 

ただし、発信内容には注意が必要です。多くの編集者は、同業者向けに編集テクニックを発信していますが、これでは案件にはつながりません。なぜなら、あなたのクライアントは編集者ではなく、企業の担当者だからです。

 

企業の担当者が求めている情報は、「YouTubeの最新アルゴリズム解説」「動画マーケティングで成果を出すコツ」「採用動画の効果的な作り方」といった、ビジネスに直結する内容です。

こうした情報を発信することで、「この人は動画のビジネス活用に詳しい」という認識が広まり、相談や依頼が来るようになります。

 

発信のポイントは、専門性、継続性、わかりやすさです。週に2〜3回、短くても良いので継続的に発信しましょう。

そして、専門用語を使わず、企業の担当者にも理解できる平易な言葉で説明することが重要です。

 

SNSでの発信が軌道に乗れば、問い合わせが自然に増え、営業しなくても案件が舞い込むようになります。

これが、高単価クリエイターの理想的な営業スタイルです。

 

動画編集の単価が低い時期を終わらせるための最短ルート

ここまで、動画編集の単価が低い理由と、高単価な直案件を獲得するための戦略を解説してきました。

しかし、これらを全て独学で習得するには、膨大な時間と試行錯誤が必要です。

 

あなたの時間は有限！独学で低単価を続けるリスク

 

多くの編集者は、「いつか単価が上がるだろう」と思いながら、低単価案件を続けています。

しかし、残酷な事実として、低単価案件をいくら続けても、直案件獲得に必要な戦略スキルは身につきません。

 

編集スキルと営業スキルは全く別のものです。

編集作業だけをしていても、企画力、マーケティング力、交渉力、ブランディング力は磨かれません。

そして、これらのスキルこそが、単価を決定づける要素なのです。

 

あなたの時間は有限です。低単価案件に時間を費やしている間に、同じスタート地点だった他のクリエイターが、戦略的に動いて高単価案件を獲得しているかもしれません。

時間という最も貴重な資源を、どこに投資するかが、1年後、3年後の収入を決めます。

 

自己投資によって時間と単価をトレードオフする発想を持ちましょう。

適切な学びに投資することで、遠回りを避け、最短ルートで目標を達成できます。

 

動画編集の単価を上げるための「ビジネス戦略」特化型カリキュラム

 

WSSクラスは、単なる編集スキルを教えるスクールではありません。営業、交渉、企画提案力といった、単価を上げるためのビジネス戦略に特化したカリキュラムを提供しています。

 

本記事で解説した「商流を上げる」ための具体的な方法を、実践形式で学べる環境を手にしてみませんか？

• 直案件を獲得するための営業テンプレート
• 成果主義ポートフォリオの作り方
• 企業へのプレゼンテーション術
• 価格交渉のテクニック

 

すぐに使える実践的なノウハウが体系的にまとめられています。

 

さらに、同じ目標を持つ仲間とのコミュニティも用意されており、情報交換や相談ができる環境があります。

独学では気づけない視点や、成功事例を共有することで、学びのスピードは加速するでしょう。

 

編集スキルはすでにあるのに、稼げていない。

その原因が「仕事の取り方」にあるなら、今必要なのは編集技術の向上ではなく、ビジネス戦略の習得です。

まとめ

動画編集の単価が下がり続けている主な原因は、市場の構造的な問題にあり、単なる「編集スキル不足」ではありません。

単価アップのためには、「商流の末端」から脱却し、「ビジネスパートナー」としての役割を担うことが不可欠です。

低単価から脱却するためには、編集スキル向上ではなく、ビジネス戦略（営業、企画、マーケティング）の習得に時間と自己投資を行うことが最短ルート。

見積もりを「作業時間」ではなく「動画で得られる成果」ベースで提示することで、価値ベースの価格設定を実現しましょう。

クラウドソーシングは評価や企業名実績を積んだら、依存せずにすぐに卒業してください。

 

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