ChatGPTを社内検索で活用するには?導入する方法・メリット・事例を紹介

「ChatGPTを社内検索で活用する方法は?」
「社内データを学習させても大丈夫なの?」
「実際に導入している企業事例を知りたい」
ChatGPT(チャットジーピーティー)は、ビジネスの幅広いシーンで活用される代表的なAIツールです。
社内検索にも利用できるため、システムと連携すれば、必要なドキュメントや情報を手軽に探せるでしょう。
ただし、ChatGPTはそのまま社内検索に適用できるわけではありません。API連携やRAGサービスを活用する必要があります。
そこで本記事では、ChatGPTを社内検索で活用する方法やメリット、企業の導入事例などを詳しく解説します。業務効率化を目指す方は、ぜひ参考にしてみてください。
ChatGPTを社内検索に利用する方法3選
ChatGPTを社内検索に利用するには、以下3つの方法があります。
- 社内システムとAPI連携をする
- RAGサービスを活用する
- 自社で社内検索ツールを開発する
順番に見ていきましょう。
1.社内システムとAPI連携をする
API連携とは、ChatGPTと外部システム機能を連携させる仕組みのことです。
ChatGPT単体ではインターネット上の情報しか扱えませんが、社内システムとAPI連携することで、自社データを利用した回答や処理ができるようになります。
社内システムとAPI連携する手順は、以下の通りです。
- ChatGPTのアカウントに登録する
- APIキーを取得する
- クレジットカードを登録する
- 連携したいサービスからAPIを呼び出す
まずは、OpenAI公式サイトにアクセスし、ChatGPTのアカウント登録をします(すでにアカウントがある場合は、ログインします)。
アカウントは、メールアドレスやGoogle・Microsoft・Apple IDのいずれかで登録できます。その後は、氏名や生年月日などの必要情報を入力し、SMS認証をしたら完了です。
ログイン完了後は、APIキーを取得します。「API key」→「+Create new secret key」を選択し、発行されたAPIキーをコピーすれば入手完了です。
次に、クレジットカードを登録します。API連携をするには必須であるため、画面左の「Settings」から「Billing」→「Add payment details」の手順で登録を進めましょう。
最後に、取得したAPIキーを利用して、連携したいサービスからAPIを呼び出します。具体的な方法はサービスごとに異なるため、各サービスの操作方法を確認してみてください。
2.RAGサービスを活用する
RAG(検索拡張生成)とは、大規模言語モデル(LLM)に外部の情報を組み合わせて回答精度を向上させる技術のことです。
本来、生成AIの回答精度を高めるには、専用の情報を用意し、一定の時間をかけて追加学習させる必要があります。
しかし、RAGを活用すれば、生成AIが特定のデータベースから情報を探して提示できるようになります。よって、追加学習のステップを省略できるわけです。
例えば、ChatGPTはインターネット上の情報のみを学習しているため、そのままでは社内の独自データを扱えません。
一方で、RAGサービスを活用すれば「インターネット情報+社内データ」をもとに回答を生成できるようになります。
単純な業務効率化だけでなく、ChatGPTの弱点として広く知られている「ハルシネーション(誤情報生成)」のリスク軽減にもつながるでしょう。
RAGサービスはさまざまな種類がありますが、代表例には以下が挙げられます。
- ChatSense
- OfficeBot
- chai+
費用はかかりますが、手軽に社内検索を効率化させたい方は検討してみてください。
3.自社で社内検索ツールを開発する
生成AIやプログラミングの深い知識・スキルを持っている場合は、自社で社内検索ツールの開発もできます。
大まかな手順は、以下の通りです。
- 回答もとになるデータを準備する
- AIにデータを学習させる
- 追加学習や調整で精度を向上させる
まず自社データを準備したら「ベクトル化」をおこないます。
ベクトル化とは、自然言語を「数値の配列」に変換処理することです。文章をそのまま入力してもAIは理解できないため、AIがわかりやすい形式に変換します。
データのベクトル化をした後は、Python(パイソン)などの言語を用いて検索システムを構築します。
最後に、必要に応じて追加学習や調整をしながら、ChatGPTの回答精度を高めていけば社内検索システムの完成です。
ChatGPTを社内検索に利用する3つのメリット
ChatGPTを社内検索に利用するメリットには、以下の3つが挙げられます。
- キーワードを考えずに検索ができる
- 会話するだけで必要な情報収集ができる
- 蓄積された情報を効果的に共有できる
順番に解説します。
1.キーワードを考えずに検索ができる
社内検索にChatGPTを活用すれば、キーワードを考えずに検索ができます。
従来の方法では、以下の手順で情報を探す必要がありました。
検索するキーワードを考える
社内システムにキーワードを入力する
検索でヒットした情報をひとつずつ確認する
目当ての情報が見つかるまで検索を繰り返す
上記の場合、目当ての情報に含まれる「正確なキーワード」を入力しないと、検索結果に表示されないという課題があります。
また「どんなキーワードを検索すればよいかわからない」「適切な単語を思い出せず時間がかかる」といった問題も発生しがちです。
一方、ChatGPTを活用すれば「自然な文章」や「類似語」を入力するだけで、AIが関連性を理解して検索結果を表示してくれます。
例えば、製品の過去の不具合事例について調べたい場合、従来の方法では「障害」「トラブル」などの用語を入力しないと、検索結果に表示されない場合があります。
しかし、ChatGPTなら「〇〇の不具合事例を知りたいのですが、何か資料はありますか?」と質問するだけで「〇〇+不具合」に関連する資料を提示してくれます。
このように、ChatGPTを活用することで、検索結果の精度向上が期待できます。膨大なデータを扱う企業は大幅な業務効率化につながるでしょう。
2.会話するだけで必要な情報収集ができる
ChatGPTは対話型のAIツールであるため、検索結果に対してさらに質問を重ねることで、必要な情報をより深く掘り下げられます。
例えば、以下の通りです。
質問者:「〇〇に関する社内規定を教えてください」
ChatGPT:「〇〇に関する社内規定は〜……(該当資料の提示)」
質問者:「その規定の最新の改訂内容を知りたいです」
ChatGPT:「最新の改訂は〇年〇月におこなわれ、主な変更点として〇〇が追加されました」
質問者:「その変更が適用される部署はどこですか?」
ChatGPT:「今回の改訂は〇〇部署および△△部門に適用されます。ただし、特例として〇〇のケースでは適用されません」
このように、ChatGPTを活用すれば、対話を通じて情報を深掘りできます。必要な情報を的確に取得できるため、スピーディーに疑問を解消できるでしょう。
3.蓄積された情報を効果的に共有できる
ChatGPTを社内検索に活用すれば、類似語から関連資料を探し出したり、対話を通じて深く掘り下げたりできます。
社内に蓄積された膨大な情報の中から、迅速に情報を取得できるため、従業員間でスムーズに知識を共有できるでしょう。
これにより、組織全体の生産性向上が期待できます。
ChatGPTを社内検索に利用する際の注意点
社内検索にChatGPTを利用する際は、以下の2点に注意が必要です。
- 社内データを学習させる必要がある
- 応答精度を向上させる必要がある
順番に解説します。
1.社内データを学習させる必要がある
社内検索にChatGPTを活用する際は、その回答もとになる社内データを学習させる「ファインチューニング」が必要です。
ChatGPTをそのまま利用しても、インターネット上の情報しか検索できません。
例えば「在宅勤務の手続き方法」を質問しても、一般的な回答を提示されるだけです。
自社の規定に沿った正確な回答を得るには、社内規定やマニュアルなどの独自データをAIに取り込むことが重要です。
学習していない情報を提供することはできないため、常に最新データを反映させる仕組みを整えましょう。
2.応答精度を向上させる必要がある
ChatGPTは、学習データをもとに回答を生成するため、必ずしも正しい結果を提示するとは限りません。
以下のような要因で、誤った回答が生成される可能性があります。
- インターネット上の誤情報を学習している
- 学習させた社内データに入力ミスがある
- 古いデータを更新せずに放置してしまっている
ChatGPTの応答精度を高めるには、正確かつ最新のデータを学習させることが重要です。
インターネット上の誤情報を完全に防ぐのは難しいかもしれませんが、入力データの正確性や鮮度を定期的にチェックすることで、より信頼性の高い回答を得られます。
ChatGPTに社内データを学習させて大丈夫?
ChatGPTのFAQには「会話の中で機密情報を共有しないでください」と記載があります。なぜなら、ChatGPTが入力データをAIのトレーニングに利用する場合があるためです。
トレーニングに利用されると、第三者の出力結果に反映されることがあります。
実際、社員が入力した機密情報が流出し、大きな問題になった事例もあります。
参考:サムスン、ChatGPTの社内使用禁止 機密コードの流出受け|Forbes JAPAN
そのような事情から、ChatGPTに社内データを学習させることに不安を感じる方もいるかもしれません。
以下の方法であれば、入力データをAIのトレーニングに使用されません。よって安心して利用できます。
- API連携する
- 会話を学習させない
- サーバーのセキュリティを強化する
- 法人向けのEnterpriseプランを利用する
- Azure OpenAI Serviceを利用する
特に「Azure OpenAI Service」は、Microsoft(マイクロソフト)が提供するサービスであることから、高いセキュリティ環境下でChatGPTを利用できます。
もちろん、上記の方法であっても、機密情報や個人情報の入力をしないことは大切です。
そうした中で、サイバーセキュリティのリスクも最小限に抑えたい方は検討してみてください。
社内検索にChatGPTを導入した企業事例
ここからは、ChatGPTを社内検索に導入している事例を見ていきましょう。
- 株式会社モンスターラボ
- アサヒビール株式会社
- 住友電工情報システム株式会社
1.株式会社モンスターラボ|利用率は想定の2.5倍、作業時間90%削減に成功
株式会社モンスターラボでは、ChatGPTを活用した社内検索システムを自社で開発・運用をしています。
同社は世界19の国と地域で事業展開をしており、各拠点が日々、最先端ナレッジを蓄積しています。
その一方で、蓄積される情報が膨大な量になり、適切なナレッジを探すのに多くの手間と時間がかかっていました。
そこで、グローバルで創出されるナレッジをタイムリーに共有することを目的に、社内検索システム「ChatRKL(チャットアールケーエル)」のプロジェクトを始動させました。
「どうしたら社員が利用しやすいか」を軸に試行錯誤を重ねた結果、普段使っているslackにChatGPTを組み込むことを決断。これにより、想定の2.5倍である約40%の利用率を達成し、これまで社内ナレッジの収集にかかっていた時間も約90%削減できたとのことです。
参考:モンスターラボ、ChatGPTを活用した 自社ナレッジ検索システム「ChatRKL」を開発|Monstarlab
2.アサヒビール株式会社|Azure OpenAI Serviceを導入し、情報が外部に漏れない環境を構築
アサヒビール株式会社では、Microsoft(マイクロソフト)が開発する「Azure OpenAI Service(アズールオープンエーアイサービス)」を活用した社内検索システムを導入しています。
導入の背景には、アサヒグループ社内に点在している技術情報を集約・整理し、効率的に取得しやすくする狙いがあるとのことです。
これにより、グループの知見を活かした商品開発の強化や業務効率化を目指しています。
Azure OpenAI Serviceの特徴には、PowerPointやWordなどのMicrosoftサービスとの連携はもちろん、高いセキュリティ環境があります。情報が外に漏れない環境を構築することで、商品開発部門でも利用しやすいでしょう。
参考:生成AIを用いた社内情報検索システムを導入 研究所を中心に9月上旬から試験運用を開始 商品開発力強化やグループ間のイノベーション創出を目指す|アサヒビール株式会社
3.住友電工情報システム株式会社|自社の社内検索システムにRAG技術を応用
住友電工情報システム株式会社では、自社開発の社内検索システム「QuickSolution(クイックソリューション)」にChatGPT連携オプションを追加しました。
このChatGPT連携オプションには、RAGの技術が応用されています。
ChatGPTには間違った情報を生成してしまうリスクがありますが、RAGで自社の検索システムと連携させれば、社内システムの情報にもとにした正確な回答を得られます。
自社で検索システムを構築している場合は、RAG技術を用いることで、迅速かつ精度の高い情報検索が可能になるでしょう。
参考:ChatGPTと連携して社内の情報に質問応答できる 企業内検索システムを販売開始|住友電工情報システム株式会社
まとめ:ChatGPTで社内検索を効率化しよう
ChatGPTを社内検索に活用すれば、従業員は自然な会話で情報を探せるようになります。必要な情報をスピーディーに得られることで、生産性向上が期待できるでしょう。
API連携やRAGサービスを使えば、リスクを抑えて社内のデータベースにつなげられます。ぜひこの機会にChatGPTを導入し、業務の効率化を実現させてみてください。
なお、以下の記事では「生成AIで短縮できる業務と成功事例」を詳しく解説しています。社内検索以外にも業務効率化を検討している場合は、ぜひ参考にしてみてください。

この記事の監修
黒山結音 - Sooon株式会社COO。「AI×営業」などの最先端ノウハウを発信。ChatGPT、Gemini、FeloなどのAIツールを活用した営業効率化手法を開発し、非エンジニアでも実装可能なメソッドを指導。「GMOコラボ 生成AI大感謝祭」に登壇者として、「AIグランプリ2025 春」に審査員として参加。生成AIパスポート保持 / Feloアンバサダー / tl;dvパートナー